僕を止めてください 【小説】




 二人でやっとの思いでベッドまで辿り着いた。小島さんに引っ張りあげてもらい、僕も小島さんの隣に横になった。小島さんはまだ気持ち悪いらしく、エビのように身体を丸めて横になっていた。僕は手渡されたスマホを枕元に置いた。

「お前が先に医者に見てもらってくれ…後遺症残るかもしんねぇ…寺岡が病院まで送ってくれる…」
「あ…はい…そうしたほうがいいならそうします」
「取り返しのつかないことしちまった…どうしたらいいんだろうな…お前これから高校行って…医者になるのに…」
「いいんです」

 両腕で顔を隠している小島さんの腕に触って、僕はその言葉を制止した。

「もう言わないでよ。小島さん追い詰めたの僕です。寺岡さんがこの前言ってた通りです。どうしたいかちゃんとするべきだったんです。流されちゃダメだったんです。でもどうしていいか僕わかってなくて…だから…ごめんなさい」
「なにいってんだよ…お前のこと無理やり犯して言いなりにさせてたのは俺だ…最初から犯罪なんだよ…俺も松田も犯罪者なんだよ。なんで謝るんだよ…お前はなんにも悪くねぇんだよ」
「だって…あの時松田さんちゃんと言ったんですよ。なにが起きてもいいのかって。いいならここから君の責任だよって。だって僕、その時帰れたんだ…僕は帰らなかった。逃げても良かったんです。でも僕はなにが起きても僕の責任にしますって言ったんです」
「お前は…どこまでお人好しなんだ…それでも俺達のせいだろうが…」
「それでも…僕は帰れなかった…自分の中の熱が…身体が欲しがってたんです…僕はそれに抗えなかった…切り捨てることが出来なかった…僕はどこかでそれを待ってたんです…」
「もういい…お前は悪くないんだ…そんなのお前の歳の男子なら普通なんだって」
「でも僕はきっといろいろ普通じゃないんです。僕は、今まで生きてる誰かと一緒に居るっていう認識すらしないできました。でも今はこうやってひとつひとつ僕に欠けてる認識を埋めているんです。僕にはきっと…必要なことだって…おも…う…。それに…ぼく…は…」

 それに僕は死にたがっていたんです…と言えたかどうだかわからないうちに睡魔が襲ってきた。どこから眠ったのかわからないが、いつの間にか僕は眠りに落ちていた。