カーテンの端から、丸く縛った電気のコードが顔をのぞかせていたていた。カーテンレールはステンレスの直径2cmほどのパイプだったが、小島さんの身長と体重ではこの装備では無理だとすぐにわかった。ステンレスだとしても、この太さなら、重いものを下げればしなる。しなったら、こんな浅いポール受けは役に立たないだろう。
「一緒に逝こうって…思ったのにな…ゲホッ…上手く…いかねぇな」
「僕を…殺そうとして…くれたの…?」
「ああ…一緒に…もういいやって…思ってさ…もう…ずっと前から…考えてた…考えが離れねぇんだ」
「なんで…小島さんは生きるの…好きでしょ」
「もういやんなった…いやんなってた…もうずっと前からさ…」
「僕に…死ぬなって言ったのに」
「人には言える…言えるし…我慢してた…飲めば忘れるしな」
「それでこんなに飲んでたの?」
「最近は…飲んでもダメなんだわ…お前と死ぬことしか考えらんなくなってた」
「これじゃ…死ねません…隆は死ぬべきじゃない…だって…だって…僕とは…違うよ」
小島さんは僕とは違うんだ。僕は咳き込む小島さんの背中をさすりながら心の中でそう叫んだ。生きている世界の人間なんだ。それなのに。僕がいたからなのか。僕が誘発してるのか。死ぬのは僕だ。小島さんじゃない。それなのに…
愕然とした。僕は初めて自分の欲望が誰かの心に影を落とすことを知った。



