僕を止めてください 【小説】




 廊下は雑誌とビールのダンボール以外なくなって、結構広かった。ユニットバスの洗面台で二人で手を洗い、部屋に戻るとエアコンが効き始めて、暖かくなっていた。小島さんはベッドに座った僕を見下ろすと、いきなり押し倒した。僕の上に重なって手首をベッドに押し付けると耳元で囁いた。

「あはは…まだ好きだ…まだ好きだよ…」
「そうですか…」
「このまま…永遠に時間が止まればいいのにな…」

 そう言うと、不意に小島さんは上半身を離して僕を上から眺めた。

「裕…」
「はい…」

 僕が見上げると、小島さんはにっこり微笑んだ。そして、手首を離すと、ゆっくり僕の首に両手を掛けた。

「今日は先にイケよ」

 大きな手がゆっくりと僕の喉を絞めていった。それは井戸の中の骨を見て以来だった。あのあと小島さんはそれをすることはなかった。いままで一度も。ずっと忘れていたその感触に、全身が震えた。

「んあっ…!」
「裕…気持いいか…」
「は…い…あ…ああっ…くはっ!」

 頭の中が真っ白になり、張り詰めた股間が一瞬で射精していた。僕は痙攣していた。意識が落ちる寸前に小島さんが呟いた。

「…俺も、すぐいく」

 僕にはそう聞こえた。視界が暗くなる。僕の頬にぽたりと何かが落ちた。いつもより僕は強く絞められていた。

「たか…し……」

 もしかして

 こっち来ちゃ…ダメだ……