「ベッドにでも座ってな」
「あ、はい」
小島さんはコートを脱いで無造作に床に落とした。エアコンのリモコンをパソコンデスクから取って、運転ボタンを押した。ピピ、という電子音が部屋に響いた。
「これでも片付けたんだよ。おかげでゴミ袋が廊下に溢れてる」
「それは大変でしたね」
「便所行ってくるわ」
小島さんは部屋から出ていった。通ってきた廊下のどこかにトイレがあるんだろう。僕は独りになった。最後の最後にここに連れてきたのはなぜなんだろうな? と、僕は不思議に思った。そう言えば佳彦は、自宅が好きだったな。思えば小島さんは外ばかりだった。ラブホとか、車内とか、例のバーとか。生活感のない部屋を見渡しながら、部屋に呼べないくらい散らかってたからなんだろうと今わかった。しばらくして小島さんがトイレから帰ってきた。
「散らかってるところ見たかったです」
「はは…お前の趣味か」
「ここ、落ち着きます。生活感なくて」
「じゃあ、無理して片付ける必要なかったなぁ」
僕の隣に小島さんも腰を下ろした。
「酔っ払った勢いで掃除しててよ。それから気がついたらベッドん中に倒れてたわ。いつ倒れたんだかちっとも覚えてねぇしなぁ。目ぇ開けたら明るくて驚いたわ」
そして僕に廊下に来いと言った。付いて行くと、マンションのゴミ置き場にゴミ捨てるのを手伝えと言われた。二人で10個くらい運んだ。ほとんど缶・瓶・ペットボトルの袋だった。



