そのまま悲しそうな顔をした小島さんと、ほとんど無言のまま30分くらい車で走った。いつもなら繁華街を通るのに、今日は郊外に向かっているようだった。畑が多くなり、空が開けてきた頃、住宅街の道路で車が止まり、砂利の駐車場にランドクルーザーがバックで入っていった。
「ほれ、降りろ。着いたぞ」
「あ、はい」
どこに着いたかわからなかったが、小島さんについて歩いていくと、オートロックもない古いマンションに入った。エレベーターに乗って4階に上がり、薄暗い廊下を進むと、一番奥の部屋で小島さんが鍵を出した。部屋番号の下に“小島”と書いてあった。
小島さんの部屋だ。初めての。
「まぁ、入れや」
「はい」
ドアを開けると、玄関には靴の類が乱雑に重なりあっていて、小島さんはそれを足でかき分けて入っていった。廊下にはゴミ袋と雑誌が積み重なり、幅が半分だった。部屋に入ると、ベッドが奥にあって、掛け布団も枕もくしゃくしゃで起き抜けのままだった。フローリングの床には脱ぎ捨てた服と酒瓶と缶が散乱していた。小さい座卓の上はいっぱいで、グラスと頭痛薬や胃薬であろう薬の箱がいくつかとビタミン剤の瓶とスマホの充電器が無造作に並んでいた。
「汚ねぇけど」
「飲んでたんですね」
「ああ…まぁ、そうだな」
部屋にはあまり物がなかった。6畳くらいだろうか。壁に付けたパソコンのデスクだけが機能している感じがした。キッチンは仕切られててここからは見えなかった。佳彦の部屋はとても綺麗だったんだということがこんなところでわかった。



