僕を止めてください 【小説】




 僕がなぜ理科が苦手か。それはひとえに『生き物』を学ぶことが多いからということに尽きる。科学の実験も物理の法則も地質も電気もなんとかアタマには入る。でも生き物は無理だ。先生のすべての言葉が意味をなさないバラバラな音になって、授業中ぼーっとしてしまう。それは生理的に不可抗力だった。どこを習うかでテストの成績がまったく違う結果になった。好きな化石はほとんど間違えなかった。だが、ものによっては0点に近い結果もあった。中間の範囲と期末の範囲が違うから、平均して赤点にならないだけということだ。

 受験日もあと1週間という時期、受験用の理科の問題集を解きながら、僕はひとつだけ生き物でも回答率の高い分野を発見した。それは『土の中の生物・分解者』というカテゴリーだった。それは単に、地中に埋められた屍体がどのように分解されていくかを図書館の本で知っていたからに過ぎなかったが、受験直前の僕の目には、それが初めて、苦手なものを勉強する発想の転換につながった。

 つまり僕は、エントロピーを減少させる方向ではなく、増大させる方向に物事を分析し、観察していけば、自分のモジベーションを上げることが出来るのではないか?