僕を止めてください 【小説】




「そう言えば、例の話…お前の発作みてぇなアレのさ」
「発作?」
「自殺屍体で発狂するヤツ」
「あ…はい」
「俺はそういうのどうしていいかわかんねぇけど、寺岡が興味があるって。あいつ大学の准教授でさ。なんだっけ…よく聞いたら文化人類学とかの専門らしいんだよな。俺もこの前まで大学の先生ってしか知らなかったけど。心理学とかの専門じゃないから治療が出来るわけじゃないとか言ってたけど、話を聞けば、ヒントくらいは思いつくかもって言うんだわ」

 僕は誰のことかわからずに小島さんに聞き返した。

「寺岡さんって?」
「ほらよ、この前の…あそこのバーで会った、あいつ」
「ああ、サラリーマンの人ですね」
「ま…スーツ着てたしな。あいつ寺岡って言うんだ。大学のサラリーマンっちゃそうだけど。そういや、いつもリーマンスーツだな…日曜日もスーツなのか、変なやつ。ほんと大学教授って変態多いよな」

 小島さんは仰向けに寝っ転がったまま微妙な顔をした。

「お前を落とす邪悪な策略という疑いもあるわな。だけどもうそれでもいいかなって。だってお前、それ克服できなきゃ困るだろ?」
「ええ。目下大問題です」
「今は大学受験と卒業のシーズン前で忙しいらしいから、お前もだけどさ、5月に入ったらまあまあ暇になるって言うんで、お前も高校入学したら会ってみるか?」
「はい。おねがいします」
「言っとくけど、危険だぞ」
「ああ…ですね。知ってます。隆が一緒にいてくれればいいですね」
「あ…うん。まあな…」

 小島さんは言葉を濁した。ボーダーラインの先の話を小島さんはいつもぼやかしてる。

「友達なんだから問題ないでしょ?」
「それか…」