僕を止めてください 【小説】





「あの…どう思いますか? 僕、国立博物館のミイラ以外に実際の屍体を見たことないんです。だから見てみたいんです。僕がそれでどんな風になるのか、僕は自分が知りたいんです。でももし、自殺の屍体を見たら…僕…正直正気でいられるか自信なくて」
「それ…大問題だぞ…裕」
「仕事だって割り切れたら、慣れていけるって思いますか?」
「俺にはわかんねーよ。お前にしかわかんねーだろ」
「高校生で見学できるところありますか?」
「それは…どうだろうな…俺も知らねぇけど」
「そうじゃないと大学入ってから解剖実習で初めて見るってことになります。そこで僕がおかしくなったらどうしようかって…後戻りできないのに」
「困ったな。違う進路模索したほうがいいんじゃね? ビルの解体とかさ」
「壊すのは好きじゃないって言ってるでしょ?」
「ああもう、わかりにくいんだよ、お前は!」

 小島さんは若干キレそうになった。僕は今はその結論が出ないらしきことを認識したので、もう少し考えなければと思った。