「お前…」
「僕は…僕は正直今でも生きてることに愛着を持つことはないです。でも、僕の知ってる生きている人の中で、小島さんがいちばんです。でも迷惑ですよね。さっきの人も言ってた。僕もそう思います。僕と居ると小島さんは苦しい。でも僕はどうすることも出来ません」
「ああ…そうだな」
「でもそんな僕に小島さんは可能性を感じて、苦しくても僕と一緒に居るんだ。だから僕は小島さんを求めてはダメなんだ…ごめんなさい…あの時僕は助けを求めちゃいけなかったんだ…ごめんなさい…台無しですよね…」
なぜかまた涙が溢れてしまっていた。声がかすれてうまく話せなかった。
「…後ろ向け」
「…え?」
「後ろ向けよ」
言われたように僕は後ろを向いた。入ってきたドアがあった。ここから追い出されるのかな…と思った瞬間、僕は後ろから抱きしめられていた。
「俺は…あの時の松田みてぇに、“これで途中で帰れる”って思ってた…そうすりゃもっと楽になれるってよ…」
「小島…さん…」
「怖いんだ…怖くてたまらねぇんだ…裕…お前が俺を見ねぇのも…お前が俺を見るのも…お前がいつ…自分で自分を殺すのかってのも…」
今日、ここで初めて小島さんに抱きしめられていた。僕の身体から力が抜けていくのがわかった。



