僕を止めてください 【小説】





 僕はサラリーマンの人に起こされた形でソファに座ったまま、小島さんを見ていた。小島さんはなにも言わなかった。僕は斜めになったメガネをまっすぐにかけ直した。そのうち僕は尿意をもよおしてきた。我慢できずに、黙ったままの小島さんに聞いた。

「あの…トイレどこですか?」

 小島さんは一瞬ギクッとしたようだったが、のっそりと立ち上がって僕の先に立ち、ドアを開けて廊下に出た。なん部屋か並んでいる入りくんだその一番奥にトイレがあった。

「部屋…わかるか?」
「いえ、わかりません」
「じゃあ、ここで待ってる」
「すぐ済みます」

 排尿した後、すぐトイレのドアを開けた。小島さんが壁に寄りかかってぼーっと待っていた。

「お待たせしました」
「あ…うん」

 小島さんの後をついていくと部屋に戻った。ドアを閉めた途端、小島さんは振り向きもせずに、立ったまま僕に言った。

「なんで怒んねぇんだ」
「怒ってないです」
「こんなことされていいのかよ!」
「怒ったほうがほうが良かったんですか?」
「ああそうだ! 見損なって怒鳴って出てけばよかっただろ! 寺岡のほうがお前のことわかってやれるだろ! お前を助けたのはあいつだ! あいつに着いてきゃよかったんだよ!」
「僕は小島さんのほうがいいです」

 それを聞いたとき、小島さんの動きが止まった。