僕を止めてください 【小説】





「とにかく裕君、君がどうしたいかこれから模索しなきゃ。いつまでも全部肯定してるわけにもいかないよ」
「どうしたいかですか…」
「わかってるのかい?」
「ええ。でもそれは止められてます。母親にも小島さんにも」
「ああ…そのことか…厄介だな」

 饒舌だった彼も言葉が途切れた。そしてゆっくりと口を開いた。

「…そのことに対する明確な判断基準を私は持ち合わせていないな。誰がいつどこで死のうが、そいつの勝手だし、私はこれこれこうだから絶対にダメなんてことをいう論理的な答えはないな…ただ…」

 そう言うと彼は僕の目を横目で見た。

「君みたいな子がそんなに早くこの世からいなくなるのはつまらない」

 そしてウフフと笑った。

「感情論以外なにが言える? だって君の感情で決めたことでしょ。それを止められるのは論理でも倫理でも宗教論でもなくてさ。君の感情的欲求を超える強い誰かの感情以外無いでしょ」

 彼は立ち上がった。そしてうなだれている小島さんの肩を手のひらでポンポンと叩いた。

「賭けだよ。勝つか負けるかわかんないんだよ。小島君。君も正直にならないと勝てない。色々あったのはわかるけど。でもそんな絶望しながら生きるなんてなんか…戦わないで負けてる感じ。自分の不幸を言い訳にしてるのははっきり言って見苦しいよね…ああ、私もそんなこと言えた義理じゃないけどね」

 じゃ、二人でゆっくり話しなよ、と言って、サラリーマンの人は出て行った。小島さんは黙ったままだった。