「拒否しないからっていって、誰でもいい訳じゃないぞ、裕は」
彼はそう言うと体を起こし、はだけた僕のシャツの前を合わせた。
「私にはたいがいの子は短時間で身体も心もたらしこめる天賦の才能があるけど、この子は本当に違う世界を見てる。私でもそこには届かないらしいよ」
小島さんは頭を垂れて黙ったままだった。
「裕君。君はちゃんと好きとか嫌いとかの区別をつけるべきだ。そうでないと自分も他人も傷つけるよ。余計な期待をさせてトラブルが起きる。そうならないようマナーを身につけるべきだ」
彼は僕に真面目な顔でそう言った。これを説教と言うに違いないと、僕は密かに思った。でもそれは正しいと思った。
「それから小島君。君ちょっとアタマおかしくなってるね。こんなことするのは君のためにもならないと思う。ちゃんと考えたほうがいい。少し年上だから偉そうに言わせてもらうけど」
「…知ってるさ」
小島さんは初めて口を開いた。それでも首はだらんと下を向いたままだった。



