「奏。
留学する気はないか?」
りゅ……留学……?
留学って……海外に行くってこと……だよね。
状況がいまいち飲み込めないまま奏を見る。
いかにも冷静そうな顔でそっぽを向いていた。
「アメリカに1年間だ。
無理に、とは言わない。
お前は七尾の長男だ。
行っておいた方がきっと役に立つ。
それに楽しいはずだ。」
「…………」
おじさん以外誰も言葉を発しない。
「……お前が栞奈ちゃんと付き合ってあることは森田に聞いた。
だからこの場で話したんだ。」
奏はそれを聞くと小さく舌打ちをした。
「1週間後にまた帰るよ。
それまでにじっくり考えてほしい。」
そう言うと、
おじさんはメイドや執事に食事を運ぶよう言い、
いつもより少し豪華な食事をみんなで食べた。
その間も奏は何も言わなかった。



