「は、離して!」 振り返ると、 そこには無表情で私を見る奏がいた。 「奏……」 「なに泣いてんの?」 「え……」 目頭に触れると、 確かに濡れていた。 「さくら、風邪?」 「分かんない。熱が……高くって……っ……うっ……」 自分が泣いてるんだと分かったから、 いや、 奏が目の前に現れたから、 私の不安は涙となって頬を伝った。