給食を食べ、午後の授業も終わると、掃除の時間になる。

「いえーい1番乗り!濁火君は2番乗り!おっそーい」
「その気になればお前がつく1時間前にここにつけるぞ」
「まあねー、私がその気になればねー」
私はそんな無駄話をしながら、昇降口の掃除用具入れからデッキブラシを取り出す。
ゴシゴシと床をこすれば、みるみるうちに綺麗になる。楽しいのでつい熱中するのだが、しばらくすると不穏な話し声が聞こえてくる。
私は(きっと彼女らにとっても)運の悪いことに教室の隅の性格の悪い連中と同じ掃除場所なのだ。

「・・・が・・・!」
「ね!・・・がうざ過ぎ・・・」

「いつも本ばかり読んでるし、・・・」

ん?

「濁火君。本読むってそんな悪いことかな」

きっと私のこと馬鹿にしてる。

「少なくとも盗み聞きよりはいいことなんじゃないか?」
「いや盗み聞きじゃないし。あっちの声が大きいだけだし。そんなことよりさ、私あの連中に何かした?」

絶対私のこと馬鹿にしてる。

「どうしたんだよいきなり…」

私は腹が立ったので耳をすませてあの連中の声を聞くことにした。

「だいたい・・・空気も読めないしさ・・・」
「あの人・・・ホント・・・」
「この前なんか・・・」
「キッモ!」

「おい、盗み聞きじゃないことは分かったから掃除に集中しろ」

「濁火君、女子には戦わなければならないときがあるんだよ」

絶対に許さない。

「お前まさか直接とめにいく気か!?」
濁火君が何か言ってるのが聞こえる。私はそんなものではもう止まらない。

「明日、ICレコーダー持ってくる!!」

「溜めるだけ溜めて地味だなっ!」
何を期待したのか濁火君が盛大にずっこける。
「そりゃあそうでしょ、証拠を集めてからじゃないと。じわじわと陰険かつ狡猾にやらないとね…!」
「お前ちょっとわくわくしてるだろ」
「ソンナコトナイヨ!」

私は終わりの挨拶を終えると同時に教室に戻った。