『みんなーっ、今日はありがとうっ!!また見にきてくれよなぁっ!』

ボーカルの人がそう言ったのを合図に、軽音部の人たちはステージを去っていく。
私はその光景を、ただぼんやりと見ているだけだった。

なんだったんだろう…。

あのギターの人………。

黒髪で少し癖っ毛な髪型。
おしゃれなピアスに、ネックレス。

おしゃれ…というか、リング型の変なピアスをしていた。

他の3人も十分輝いていたはずなのに。
…あの人だけは、なぜか特別な気がした。

「…さっ、………りさっ!おーいっ!!ありさっ!!」

「………っ?!ふえっ?!?!」

いきなり、名前を呼ばれてびっくりした。
その拍子に変な声まで出ちゃった。
……恥ずかしい。

びっくりしてふりむくとそこには、
私よりうんと背が低い(チビな)李恋がいた。

「あーっ、もー…やっと気づいたぁー!
さっきから、何回も呼んでるのに全然返事ないし…。
あたし、無視されてるのかと思ったじゃんっ!!」

そう言って、李恋は白いほっぺたを膨らませた。

「えぇ?!そーだったの…?
…ごめん、全く気がつかなかった」

「全く、もぉー……」
そう言って、李恋は私を見上げ、

「そんなに、あのギターの人が気になるの?」

と囁いた。