キミは私が1人で居る時に声をかけてくれた。大きな猫目と長い髪が印象的な女の子。

「ねぇ、東さん、なにしてるの?」

「えっ?」

人1倍人見知りで、友達が居なくて、人の名前も覚えるのが苦手だった私にこの子の名前なんてわからなくて。

「1人でなにしてるのかなーって」

「えっと…」

「高野さーん」

「あ、はーい

ゴメンね、先生に呼ばれちゃったや

また、後で来るね」

「う、ん…」

バイバイ、と手を振って先生の方へ走って行った。

「……高野、さん」

私に初めて話しかけてくれた女の子の名前は忘れないようにしなきゃ


「東さん‼︎」

…本当に戻って来てくれたんだ

「あっえっ、と…た、高野さん」

「カノンでイイよ‼︎私、高野花音だから」

「カノン…さん‼︎」

呼び捨てにするのはどうかと思いさんを付けるとカノは笑って

「さんはいらない‼︎」

なんて言った。

「か、カノ…ン」

「カノンが言いにくいならカノでもイイよ‼︎」

「カノ」

忘れたくない名前。心の中でもう一度呟いたっけ。

「私、東、瑠維。」

「ルイ‼︎」

「…」

私の名前を呼んでジッと見つめる目。


…あ、目、合わせれてる

パチパチと瞬きをしてみる。

…目は合ってる。この子となら目、合わせれる。…不思議な子、カノって

すると突然笑い出すカノ。

ずっと瞬きしてたみたい

恥ずかしくなって睨んで。

2人で笑いあった小学四年生の悩みなんてなかった冬。



カノと心友になって、2年が経ち私達は六年生になった。

カノは表情に出やすい。でも、それがわかるのは私だけらしい。だから、カノが今怒ってるとか、悲しんでるとかは顔見たらわかる。

カノは私と居るようになってから色んな人から一目置かれる存在になってしまってた。

それに気付いたのは、カノと女の子の会話を聞いた時。

「なんかカノン性格変わったねー」

「そー?」

「うん…あ、あれからだよ‼︎東さんと一緒に居るようになってから」

「ルイのせいじゃないよ

こっちが本当の私だもん」

…怒ってる

その女の子の事を軽く睨んでカノはスタスタと歩き出した。


一度カノにこんな質問をしたことある

「性格変わったねって言って離れていった人は追いかけなくていいの?」

私だったら追いかけるのに、と心の中で呟く。

なのにカノは笑って。

「離れてった人はほっといたらいーの‼︎

それって私じゃなくて『前の性格の』私が好きって事でしょ。私は私自身を好きになってくれた人がいーの」

でしょ、ルイ

なんて付けたしてこっちを見て笑ったカノは一番綺麗に見えた。

カノにしたらこんな考えは当たり前過ぎて覚えてないかもね



初めて会った時から吐き続けてた嘘

今更リセットなんて出来ないけど私は許せるよ

だって、『カノ自身』が好きだからさ

どんなカノだって受け入れられる

ってカノの手を取って言ったなら

カノは、消えなかったの?