一瞬、動きが止まったかと思うとゆっくりと振り向いた。
「……何」
「呼んでみただけ。懐かしいでしょ」
私が笑うと孝介は顔をしかめた。
「真耶、今日変」
「…今日ね、高校の通学路で母校の制服着た人見たの。色々思い出しちゃって。……孝介が私に直接何も言わずにオーストラリア行っちゃったこととか」
すると、孝介はしかめっ面をしまって目をそらした。
「日本に…戻って来てるのに連絡くれなかったりとか…」
偶然、面影のある人に出会ったときは驚いた。しかもそれが『本物』だったなんて。
「それは、成人してからだろ。連絡しようにも連絡先知らなかったし」
「孝介が私の電話帳消しちゃったからね」
「あの時は………本当に戻って来ないつもりだったからさ…」
「……知ってるよ。……だから、今幸せだなぁって思ってたの」
着替え終わった孝介に、そっと抱き寄せられた。
「結婚するとき誓ったけど、ちゃんと幸せに出来てる?」
「すっぅっっ~ごぃい幸せ!」
「そう…」
抱き締める力が強くなった。
私も応えるように腕を背中に回す。
「俺も幸せ。……愛してるよ。今までもこれからも」
「…ん……」
唇を何度も角度を変えて重ねた。
「あのころは思いもしなかったよな~。未来がこうなってるなんて」
「そうだね~…孝介と結婚するのは私じゃない誰かだと思ってた!」
甘いムードに浸っていると下から駿斗が呼んでいるのが聞こえた。
「ママーパパー!ごはん早くたべようよ!」
愛おしい声に笑みがこぼれる。
もう一度触れるだけをキスをして。
「ごめん~食べよっか」
「おー!旨そうだ」
「おばあちゃんがつくったんだよ」
「どおりで旨そうなわけだ」
「ちょっと、どういう意味!?」
「こらこら、息子の誕生日に夫婦喧嘩しないの」
「さぁ食べようか」
「あ、お父さん。瑠璃おいでー」
「あぶぁ…まんま!」
「はいはーい、ママですよ~。いい子にしてた?瑠璃」
「あいっ!」
「パパ、瑠璃の離乳食取って」
「はい」
「おばあちゃんもうたべていい?」
「そうだね、…じゃあ乾杯しょうか」
こうして、賑やかな毎日は続いていく。駿斗や瑠璃も私たちみたいな青春をおくるのだろうか。
どうあってもいい。ただ、今幸せでいてくれれば。
【fin】

