「お父さんただいま~…って、寝てる」
「あらあら」
瑠璃を見ていてくれたのか、隣でぐっすり眠っている。
「ママ~、パパは?」
「パパはもう少しかかるみたい。ご馳走作って待ってよっか」
「うん!」
駿斗はそう言いながらも嬉しそうにバタバタと部屋に入っておばあちゃんに買ってもらったというおもちゃを開け始めた。
「こら、おもちゃは手を洗ってから!」
「あさ、あらった!」
「お外に出たらいつも洗うの!いつも言ってるでしょ!?」
「…………………はーい…」
キッチンに行くと、私と駿斗の掛け合いを聞いていたらしいお母さんはクスクスと笑い声を漏らしていた。
「あんたそっくり」
「えぇ!?あんなやんちゃじゃなかったでしょ」
「あれより酷かった」
「嘘…」
ショックだ。
「あ、美味しそう!やだ、全部用意してくれたの!?…ケーキもある!」
「駿斗も瑠璃も、あんたほど面倒はかからなかったからね」
もうっ!
豪快に笑う母親に、
『シワ増えるよ』って言ってやりたい。
料理を一通りテーブルに並び終えたところで
「今晩はー」
という声が聞こえた。
「帰ってきた」
私が言うが早いか、駿斗は駆けて部屋を出て行った。
「パパー!おかえりー!」
「おー!駿斗ただいま。それ、どうしたんだ?」
「おばあちゃんにかってもらった!」
「そっか、良かったなぁ」
パパはくしゃくしゃと駿斗の髪を撫でて、駿斗は嬉しそうだ。
「ほら、駿斗ご飯だって。手洗ってきなさい」
「えー!?さっきあらったよ!」
「もう一回洗うの!」
「…………………………………はーい…」
駿斗はまた、慌ただしく駆けて行った。
「おかえり、パパ」
「…ただいま。改まってどうした」
「ん~?別に~?」
パパの持っていた鞄を取ると、二階の、今日私たちが泊まる部屋に下ろした。
「はい、着替え」
「サンキュ」
もう、何年も前に夫となった彼の着替えを見つめながらぼぅっとする。
「何、そんなに熱烈に見つめられると照れるんだけど」
「……うん…」
「……笑うとこだろ」
「………うん…」
はぁ~っと息をついて着替えに戻った夫の背中に
「孝介」
と、懐かしい名前で呼んでみる。

