え……?
喉まで来た言葉は音にならずに消える。
身体中の全部の神経が働きを忘れたように止まったようだった。
好きって…好き…??
「家族的な?」
「男女的な」
嘘…………。
「だって、孝介は細井さんのことが…」
「はあ?誰がそんなこと言ったんだよ」
「…誰も言ってない…けど……でも孝介、細井さんの前だと嬉しそうだったし…まんざらでもなさそうだった……」
「そりゃ、細井は可愛いからな」
「ほら…「でも可愛いだけと好きは違うだろ」
「…ーっ」
その変化球は反則だ。
「どうして今さら言うの…何で…孝介はオーストラリア行っちゃうのに…」
もっと早く言ってくれれば…。
そう思わずにはいられない。
だって、そうすればもっと別の道があったかもしれないのに…。遅いよ…。
「…真耶は、一條先輩が好きなんだと思ってたからさ…」
それはまるで、頭を強く殴られたかのような衝撃だ。
孝介に気持ちを悟られないよう憧れを好きに変えていた。
たけど、それが徒になっていたのだ。
「ごめん」
孝介の声が笑った。
「だから、俺さ、細井のこと好きなふりした。その時は真耶が嫉妬してくれるのが嬉しくてな」
なにそれ。
「ばか」
「……」
ねぇ、孝介。私たち、すごく遠回りしたけど結局はここに行き着いたね。
私、待ってるよ。孝介が帰ってくるの。
「孝介、私も…」
好きだよ。
そう言おうとした次の瞬間、熱く鼓動を打っていた胸は熱を引いて冷めた。
電話から聞こえてくるのは孝介の声ではなくて…。
冷たい無機質な機械の音だったから。

