「今帰りかお前」
この声は…
あぁ…
なんであんたなの。
なんで…先輩じゃないの。
そこにいたのは、さっき私が助けを願ったとき誰よりも先に浮かんだひとだった。
「孝…介…」
そう言ったつもりだったけど、声になっていたか分からない。そのくらいいっぱいいっぱいだったんだ。
「……どうした」
「………」
「泣いてる」
そっと両頬を包まれて、そこから身体に熱が戻る感覚がした。
「先輩が居なくて寂しかった…とか?」
…違う。
首を横に振る。
「酔っ…払いに………絡まれて…こわ…かっ……た…」
吐き出した声は強張って震えて、途切れ途切れに出すのが精一杯だった。
本当は笑われるかと思った。
そんなことかよって、泣いてることをバカにされるかと思った。
私だってバカみたいだって思う。
こんなことで泣いたりなんかして。
こんなに弱いはずじゃなかった。
もっと勇ましく対処出きるはずだった。
でも、怖かった…。
ねぇ、
バカにしたみたいに笑ってよ。
そしたら、私はあんたのこと嫌いになれると思うの。
ねぇ、
そんな顔しないで?
ここで私の涙を拭ってくれるのが先輩だったら良かった………。

