「こらっ!なにやってるの!」
そして、塀の向こうの家から母親らしき人の怒号と、子供の泣き声が聞こえてきた。
「んぁ~?」
酔っ払いがよそ見した瞬間、私は全力で駆け出した。
幸い、追いかけては来なくて少し安心したけれど、一度抱いた恐怖はそう簡単には消えなかった。
家まであともう少しだ。
私は、身体を強ばらせながら神経を全細胞に走らせ、360゜を警戒した。
その間鼓動は速まるばかりだ。
家の見える角を曲がるそのとき、肩をいきなり掴まれて私の心臓はきっと、ほんの一瞬だけれども、止まっただろう。
身体は最高潮に強張った。

