いつもは通らない近道の夜道を足早に歩いていると
「こんばんはぁっ!」
やけに元気な声に挨拶をされて何事かと振り返ってみれば、そこにいるのは顔を朱くしたサラリーマン風背の男だった。
覚束ない足取りを見て眉をしかめた。
酔っ払いだ。
僅かに臭うアルコール臭は不快でしかない。
私は無視を決め込んだ。
足取りを再開して帰路に付くと、なぜだか酔っ払いも付いて来る。
「こ~ん、ば~ん、はぁ~!!」
さっきより大きな声で言われて肌がひやりと冷めた。
気持ち悪い…。
率直な感想だった。
「おじょーちゃん、ひとりれすかぁ~?」
「やっ!」
肩を抱かれて、身体は硬直してしまって。
気持ち悪さと恐怖が入り混じった。
やだ…。
恐怖で何も言えない。
よく、何かあったら叫んで助けを求めなさいとか言われるけれど、そんなの無理だ。
そんな余裕ないし、声も出ない。
助けて…誰か…
誰か通って…ーーー…っ!!!!
願っても願っても人の気配は一向になくて…。
ドラマのような展開は、現実にはそうそうない。
涙で視界が滲み出したそのとき。
何かが割れる音が響いた。

