「俺も憧れてるよ。川下さんに」
え…なんで私の名前…。
「うそ…」
咄嗟に出た言葉に一條先輩は苦笑する。
「うそじゃないよ。何で俺うそつかなきゃなんないの」
「すいません…。でもだって……なんで?」
私の問い掛けに静かに笑って、先輩は私の隣に座った。
「春の練習試合時のこと覚えてる?」
私は頷く。
忘れるはずない。先輩の試合を初めて見た日。近くで先輩の応援をした最初で最後の日。
「川下さん、一番最初に応援に来てくれたよね」
「知っててくれたんですか!?」
「うん。ひとりだけおっきい声だった」
……う…。
先輩に応援が届いていて嬉しいけど……
やだ、恥ずかしい…………。
「おっきい声でさ、最初は鬱陶しかったけど相手チームに点取られて差が広がって、こりゃダメかなってときに川下さんの声援が届いて、すっごく勇気付けられた」
そんなこともあったなぁ……。
「でもその直後他の女子の応援の子たちの中でもみくちゃにされて怪我してたよね」
「あはははは……足の骨折を…はい」
「大丈夫かなって思ってた。責任感じながら心配でずっと見てたらいつの間にか、怪我治った後でも目で追ってて…」
ちらっと先輩を盗み見ると目が合って引き込まれそうになる。
だって、すごく綺麗なんだもん。
「試合の日、流石にもう来ないかなって思って、案の定応援席にもいなくてがっかりしてたらさ、遠くの方から頑張れーって聞こえてきたんだよね」
「はい……。応援はしたかったんですけど……でもやっぱりあの女子の応援の中に入るのは怖くって」
「うん。…………そのときね、好きだな~って…」
『好きだな~って』
心臓が高鳴った。
信じられない…。私、あの、一條先輩に告白されてるんだよ。
ずっと憧れてた一條先輩だよ。
すごく、すごく、嬉しい筈なのに。
今私の頭の中は孝介でいっぱいだ。

