「おい、待てって。」
そう言って私は腕を掴まれる。
勢いのあるまま腕を掴まれたから
思わずバランスを崩してしまう。
「っきゃっ!」
そのまま腕を引っ張られて
私の身体は一哉さんの腕の中にスッポリと収まる。
ドクンドクンと心臓の音が大きくなるのが分かる。
「か、一哉さん!」
「…お前が無視するのが悪い。」
そう言って何事もなかったように私を離してスタスタと浜辺を歩いて行ってしまう。
「まっ、待ってっ!」
急いで一哉さんの後を追う。
追いついて隣に並ぶ。
徐々に太陽が沈み始めた。
「…お前、こーゆーの好きだろ。」
「へっ?」
「夕日っつーか…こーゆー…景色。」
一哉さんの見つめる先には
太陽が水平線に沈みかかっている。
キラキラと水面を太陽が照らしていて
風が穏やかに吹いている。
確かに…好きな景色かも。
「連れてきてもらったことに感謝するんだな。」
でたよ…
またまた上からなんだから。
でも…。
「…感謝…してます。」
ここはいつもより素直になってみる。
少し驚いてる一哉さんの表情。
大きな手が私の髪に触れた。

