下に降りると既に一哉さんはエントランスにいた。
…早いなぁ…。
電話切ってからそんなに時間かかってないのに…。
「おっ、お待たせしました!」
「ん。」
一哉さんはチラッと私を見て立ち上がる。
ホテルの目の前が海になっていて
いわゆるプライベートビーチが広がる。
少し涼しい風に髪がなびく。
一面の砂浜。
その奥に広がるエメラルドグリーンの海。
「うわぁ……。」
思わず声が出てしまう。
こんな綺麗な海を
好きな人の横で見れるなんて…。
幸せだなぁ…。
ふと、横を見ると一哉さんもしっかりと海を見つめていた。
まだ明るいからか
海で泳ぐ子供たちがはしゃいでる。
その横には一緒にくっついてるカップル。
その人たちの顔はみんな幸せそう…。
……。
一哉さんとの距離は手を伸ばせば届く距離。
だけど……。
触れてはいけない。
触れられない。
彼はあくまで私の上司で…。
彼にとっては私はただの部下にすぎない。
こんなに側にいるのに…。
誰よりも遠い。
それは仕方ないことで…変えられない…。

