「あー、美味かった。」
「ですね。」
…結局…一哉さんにご馳走になっちゃった…。
お店を出て車に乗り込む。
「家まで送ってく。」
「えっ、ち、近くの駅まででいいですよ?」
「危ないだろ、こんな時間に1人で帰すのは。」
そんなこと言ってもまだ9時なのに…。
「でも…」
「黙って送られとけ。」
そう言って車は走り出す。
…最近の一哉さんは
優しくて…
この優しさに甘えてしまいそう。
1年限りなのに…。
頭では分かっているのに
思うことを止められない。
どれくらい走ったのか分からない。
でも気付いたら車は家の前に着いていた。
「ありがとう…ございます…。」
「ん。いい加減、口調は慣れろよ。」
そう笑う一哉さん。
「ごめん…お、おやすみなさい…。」
この笑顔が私だけのものだったらいいのに。
この人が私の側にずっといてくれれば…
いてもたってもいられなくなって
急いで車を降りる。
「な、菜央?」
名前を呼ばれて身体が火照る。
「一哉さん…ごちそうさまでした。」
そう言って一哉さんに一礼してマンションのエントランスに向かう。
「菜央!」
再び名前を呼ばれて身体がビクッとする。
後ろを向こうとした瞬間。
フワッと後ろから一哉さんが私を包み込んだ。

