「びっくりしちゃったよ」
進上が歓びを堪えきれないというように、孝志を見る。
「お前、佐田さんと友達だったの? いやいや、突然すみません。わたくし、キャノル宣伝部の進上と申します」
進上が胸ポケットから名刺を取り出し、両手で佐田に手渡す。孝志は仕方なくそれをもらった。
「ここいい?」
佑司が「はい」という前に、進上はさっと孝志の前の席に座った。佑司も仕方なく再び席につく。
「アイスコーヒーね」
進上がカウンターに向かってオーダーすると、満面の笑みを浮かべて孝志を見た。
「鈴木とはお知り合いで?」
「はあ、まあ」
孝志は営業用のスマイルを浮かべる。
「なんだよ、鈴木。言ってくれよ。俺、佐田さんを推したいって言ってたじゃないか」
「はあ」
「いや、うちの製品に、佐田さんのイメージがぴったし。オフィス用プリンターなんですけどね。こんな、ほら、めちゃくちゃかっこいい上司がいたら、そりゃもう、女の子たちはめろめろでしょ?」
進上が、喫茶店の静かな雰囲気に似合わない「がはは」という大きな笑い声を立てた。
「ありがとうございます」
孝志は頭を下げた。
「いやまあ、謙虚だ。こんなに成功してる有名人なのに。なあ、鈴木」
「そうですね」
佑司も困ったというような顔をして話をあわせている。

