孝志は押し黙った。
佑司は伝票を手に立ち上がる。
それを見て孝志が「僕が……」と手を伸ばすと、佑司はにこやかに「いえ、ごちそうさせてください」と言った。
乾杯。
あ、ちがった。
完敗。
弱みを見せて、なおかつ、ミツを奪うエネルギーを与えてしまった。
孝志は唇を噛んだ。
「それでは」
佑司がそう言って去ろうとしたとき、窓ガラスをコンコンとノックする音がした。
振り向くと、道路から喫茶店の中に向かって、満面の笑みを浮かべた背広の男性が、こっちに手を振っている。
顔ばれしたかな。
今はそれどころじゃないのに。
「進上さん」
佑司が伝票を片手に驚いた声をあげた。
チリンチリンとドアにつけられた鈴がなり、進上がうきうきしているような足取りで喫茶店に入って来た。
「あっつ、あっつ」
少し脂肪を蓄えた身体をゆすりながら、こちらへ近づいてくる。
「鈴木ぃ」
「進上さん、おつかれさまです」
佑司が頭を下げた。

