「どんな仕事してんの?」
「えっと……普通の……」
「営業?」
「そ、そう」
光恵は慌ててそう言った。
架空の婚約者像を、頭の中で設定しておかないと、ぼろが出てしまいそうだ。
「いい奴なんだよな」
「うん」
「じゃあ、よかった。光恵が幸せなら、それが一番だ」
「うん、ありがとう」
「大学の奴らに、婚約パーティ開けって言っておくよ。今でもよく飲むんだ」
「え!?」
光恵の心臓が思わず飛び上がった。
「光恵の心を射止めたのがどんなやつか、みんなで冷やかし半分で見てやる」
佑司がさわやかな笑顔でそう言う。
と、とんでもないっ。
「あ、あのっ、ちょっと、人前に出るのが苦手な人で……」
光恵はあたふたとし始める。
佑司はきょとんとした顔で、みるみる青ざめる光恵を見つめた。
「みんなに紹介できない奴なの?」
「えっ、あのっ、そ、そうかな」
佑司がグラスを置き、厳しい顔をして光恵を見る。
「やましい男なのか? 不倫とか、駄目だよ、絶対」
「え? ははは、そんなんじゃ……」
「じゃあ、なんだよ」
「いや、本当に、引っ込み思案で」
しどろもどろの光恵を、佑司は疑いの眼差しで見つめる。
「本当に大丈夫なやつなのか?」
「うん」
「……そっか、ならいいけど」
佑司はいまいち納得していないというような、憮然とした表情でワインを飲んだ。

