「結婚って、いいものですか?」
孝志は思わず訊ねる。脳裏に光恵の笑顔がよぎった。
「ああ、いいよ」
佐々木はテレもせず、さらっと言った。
「やっぱりそうですよね」
孝志は自然と顔に笑みが浮かぶ。
「何? 結婚すんの?」
佐々木が不思議そうな顔で孝志を見つめる。
あ、まずいや。
「いえいえ。憧れですよ」
孝志は首を振った。
「ほんとか?」
「そんな訳ないじゃないですか」
孝志は「ははは」と笑い返す。
「付き合ってる人、いるだろ?」
佐々木がにやりと笑いながら、問いかける。
「まあ……」
孝志もそこは否定できない。
俺にはミツっていう、スイートな恋人がいるんだから。
「その恋人も大変だな。お前と結婚するのは難しいからなあ」
佐々木は頭をもしゃもしゃとかきながら言う。
「そうですかね」
孝志は首を傾げる。
「そりゃそうさ。孝志、自分で分かってないの?」
佐々木が笑った。
「ま、いいや。今度ゆっくり話そう! 仕事の話も含めてな。お疲れ!」
佐々木が孝志の背中をぽんぽんと軽く叩く。
「おつかれさまでした」
孝志は頭を下げた。

