女性は「ふん」と鼻で笑うと、どかっと控え室の壁際に置いてある革張りのソファに座り込んだ。
光恵はなにがなんだか分からず、呆然と立ち尽くす。
「あの……」
「なんですか?」
優越感に浸っているようなその女性は、光恵を睨みつけるように見上げる。
「とりあえず、今日は帰っていただいても?」
光恵は丁重にそう訊ねる。
「なんでよ」
「だって、もうすぐ式が始まるし。本当なら、彼に確かめてみないと」
「じゃ、今、連絡すれば? もちろんいるんでしょ?」
「はあ……」
式の前に、新郎に会ってもいいんだろうか。
光恵はぼんやりとしながら、そんなことを考える。
「早く!」
「は、はいっ」
光恵は言われるがままに、孝志に携帯から電話をかけた。
「もしもし」
「ミツ?」
孝志の甘えた声が聞こえて来た。
実に能天気な感じだ。
「あのね」
「うん?」
「今、控え室に、あなたの彼女だっていう人が来てるんだけど」
「……まさか」
「とりあえず来てくれない?」
「……わかった」
あろうことか、孝志の声が心なしか緊張しているのが分かった。
もしかして。
心あたり,アリなの?

