帽子に眼鏡。羽織ったパーカーが心なしかキツい。
居酒屋は代々木公園の近く。孝志はタクシーを降りると、溜息をつく。久しぶりの外界。空を見上げると、秋の夜空。気づかぬうちに、すっかりと寒くなった。公園からの落ち葉が、道路の吹きだまりに積もっている。孝志はその山を足で蹴っ飛ばした。
「いらっしゃいませー」
無駄に元気な店員の声。
「佐々木の連れです」
孝志は言った。店員は不思議そうに孝志を見る。それから何事もなかったように、一番奥の個室へと案内された。
日本酒のうまい店なのか、カウンターの後ろにはたくさんの瓶。週末の夜ともあって、たくさんの客でにぎわっていた。
「おつかれさまです」
個室に入ると、孝志はそういって自分の帽子をとった。
「おお、よくきたな」
佐々木はそう言うと、孝志の顔をまじまじと見つめた。
「おまっ、ちょっ、ほんとに孝志?」
「はい」
孝志は佐々木の向かいに座ると、ぐったりと身体を椅子に預けた。
「あの記事は本当だったんだな。あの記事よりもずっとやばくなってる」
「記事?」
「読んでないの?」
「はい。俺、ネットもテレビも全然見てませんでしたから」
「佐田孝志、まさかの激太り」
「そんな記事が?」
「おお。コンビニで大量にお菓子を買ってる写真、撮られてたぞ」
孝志は「へえ」と投げやりな返事を返した。

