「お姉ちゃんは、なんでも頭で考えすぎるんだよ」
光恵は首をかしげる。「どういうこと?」
「別れたくないと思えば、別れなきゃいいし、会いたいと思えば会えばいい。誰に反対されてもね」
春恵はベッドの上に胡座をかいた。
「そういう訳には……」
光恵はまっすぐな春恵の表現をうらやましく思いながら、頭の中にわき上がる数多の「別れの理由」を考えた。
「佐田さんと離れて、平気なの?」
光恵は首を振る。「死んじゃいそう」
春恵は「わお、情熱的」と笑顔になる。光恵は「ふふふ」と笑って、春恵の脇腹に軽くパンチを入れた。
「じゃあ、会いに行きなよ。『でも』も、『くそ』もないんだから」
「でもそれで事態がもっと悪くなったら?」
光恵はうつむく。
「もちろん悪いことが起こるかもしれないけど、佐田さんと結ばれる運命にあるなら、何が起こっても大丈夫」
「春恵って、ロマンチストだったんだね」
「そう? でも運命って、本当にあるでしょ? それに……わたしまだ、佐田さんのことお兄さんって呼んでないし、野島輝も紹介してもらってない」
春恵がにやりと笑う。
「なんだそりゃ」
光恵は再び春恵の脇腹にパンチした。

