おててがくりーむぱん2



懐かしい自分の部屋に入った。窓にかかる白いカーテンを開けると、かつて毎日見ていたのどかな風景が広がる。薄いピンクの絨毯は、少し色あせたように見えた。


学習机に壁一面の本棚。ぎっしりと文庫本が詰まっている。光恵は本棚に寄って、一冊を手に取った。


学生時代、夢中で本を読んでいた。毎日、寝ても覚めても、本を抱えていた。


新しい世界が、自分のなかに広がって行く感じ。
作者が描いた景色が、確かに見える。


いつからか、自分でも書きたいと思うようになった。


「作品は普通」


自分の描く話が普通であっても、光恵にとってもは特別なものだ。
書いているときの高揚感と、例えようもない幸福感。
今、それを手放したことを、後悔している自分がいる。


そう、きっと。
ネット上で言われていることは、ある側面では真実なんだ。
孝志と付き合うようになって、自分は変わった。
自分の存在価値を、彼に見いだそうとした。
求められてる。
愛されてる。
だからわたしは大丈夫、だと。


「おねえちゃん」
そう声をかけられて、光恵は振り返った。