「あの、僕はこれで失礼します」
佑司が立ち上がった。
「鈴木さん、お茶でも飲んで少し休んでいらして」
母親が慌てたように引き止める。
「いえ、これから約束もあるので。光恵さんを休ませてあげてください」
佑司はそう言うと、ソファに座る光恵の肩に手を置く。
「しばらく甘えさせてもらいなよ。今度俺、佐田さんにイベントのとき会うんだ。様子を見てくるよ」
「イベント?」
「そう、製品発表会があるんだよ」
佑司はそれから「間違っても、会いに来ちゃだめだ。この騒動の後、初めて彼が公の場所に出ることになるから、マスコミの量がすごい」と言った。
「う……ん。わかってる」
光恵は頷いた。
佑司は安心したように微笑むと、実家を出て行った。
「光恵」
父親が呼びかける。
「何?」
「結婚はするのか?」
「……わかんない」
光恵は首を振る。
今はもう、何もわからなくなった。

