ずっと避けていた。この場所を通らないようにわざわざ遠回りをして通勤していた。 「瑛。」 目の前に立つと、男は緩いパーマの髪をかきあげてこっちを見た。その胡座の上にはもちろんギターがある。 「亜梨実?おまえ、すっぴん酷いな。一瞬誰かわかんなかった。」 「うるさいよ。今日は一日泣いてたんだから仕方ないでしょ。」 しばらくぶりに会うのに、瑛は変わらない態度だった。隣に座ると、ぎょっとした顔で私を見ていた。 空を見上げる。今夜は満月だ。 「今日聡と別れた。」