「聡と別れろ別れろってさあ、あんたにそんなこと言われる筋合いない!私は聡が好きだし、聡だって……。」
つらつらと感情が止まらない。吐き出しているうちに涙が滲んでくる。
泣くもんか、こんな憎たらしい奴の前で。
目頭にぐっと力を入れて涙が溢れるのを堪えた。
「……泣いてんの?」
「泣く訳ないでしょ!」
「泣くってことは本当はわかってるんじゃねーの?現実見ろよ。」
へらへらした態度が一転、真剣な表情に変わった。その張り詰めた空気に、涙が揺らぐ。
「泣いてないって言ってるでしょ!」
「今のままが幸せかよく考えろ。」
「うるさいっ!」
雫が落ちそうになった瞬間、後ろを振り向いてそのまま、走った。
聡が好きだ、大好きだ。聡と別れるなんて考えられない。ずっと一緒にいたい。
走って走って。まだ暑い夜の中、涙も野方瑛も自分の心も、全てをふるい落とすように、駆け抜けた。