「……すいません、やっぱ嫌ですよね。堺さんに似合うかなと思ったんだけど、他の女の子用に買ったものだし。」


今発した言葉を後悔しているように、彼は首の後ろに手をやった。コートから伸びる裸の手。

普通は失礼でしかないだろう。他の女の子のために選んだものを、しかも一緒に選んだ人にあげようだなんて。

だけど私は。この寒い夜に、きっと冷たいであろう手でここに来た彼を、微笑んでしまった。


「…いえ、ありがとうございます。いただきます。」

「よかった。」


彼が笑って、また八重歯が顔を出す。

この後私から食事に誘った。淡い予感の行方を確かめたくて。

結果は言うまでもない。私はすぐに一つ年下の聡に予感通りの恋をして、冬が和らいで来た頃に付き合い始めた。