「昔はな……。でも、今は心配なんだよ」


橘くんは優しい口調でそう言いながら、私の顔を覗き込む。


意味わかんないよ……


「お前、今日はもう帰ったら?」


私も“帰ろうかな”と考えていた。


ずっと屋上に居ても仕方がない。


かと言って、この顔じゃ授業に出られないから。


それに、教室には水沢くんが居る。


同じクラスなんだから、当たり前だけど。


今、水沢くんに会うのが、怖いんだ。


「あっ、そうだ。お前の友達、心配してたぞ」

「わかった。後で連絡するよ」


そう言った時……


バンッ――


また勢いよく、屋上の扉が開いた。