私は、水沢くんの後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。


私……

何も言えなかった。

水沢くんの気持ち、嬉しかったのに。

それなのに、何も言えなかった自分が嫌になる。


そう思うと、目の前が涙でぼやけてきた。


涙をこらえながら、寮に入る。


「……若菜?」


私の部屋の前で、繭花と胡桃が心配そうに立っていた。


「水沢の話、何だったの?若菜……、大丈夫?」


繭花が聞いたと同時に、私はこらえていた涙が溢れてきた。


そんな私は胡桃に支えられながら、部屋に入った。


「何があった?」


私が落ち着いたのを見計らって、繭花は声を掛けた。


「あのね……」


私は二人にさっきの出来事を話した――…