目を開けると私は貴方の腕の中にスッポリ収まっていた。今だに夢みたい。
昨晩、貴方と食い千切る様に私の“初めて”を捧げた事や、信じられないぐらい名前を呼び合った事も、全て。

まるで、お互い名前しか知らない様に、貴方以外の声は発ない。

今、私の頭上で寝息を静かに立てている、その人は、遠い存在だった人。
いくつも、教卓の上からしか接する事が出来ない人。人はそれを『生徒』と『教師』と割り切る。

でも、私は割り切るなんて出来なくて…只、憧れていた。
まともに話す事なんて、出来ない私の頭を優しく撫でる掌さぇ、勝手に愛情を感じる取る日々。

しかし…私を包む人の腕は、今、私だけを握っている。他の誰でもない私自身を。堪らない程に嬉しい。目から溢れる嬉し涙がめじりに溜り、鼻筋を通り唇まで達する。
ムズムズする感覚に襲われたが、貴方に腕ごと抱かれているせいで身動きが取れない。只、流れる涙を溜める。

しまいに、涙は貴方の引き締まった腕に伝わった。
冷たい感触にピクリと腕が反応した。