がちゃん、と屋上の古びたドアが錆びた音を出した。
目の前にはもう5時だと言うのに(夏は日が長い所為だ)皮肉なほど綺麗な青と白が飛び込んできて、少し目を細める。
目を細めた先に、フェンスに腕を乗せて空を見上げる陸嵩の姿。
その人物に近づいていく。
私だと分かっているのだろうが、顔を向けずひたすら空を眺めている。
お互い無言のまま、陸嵩の隣についてフェンスを握る。
「青いなあ、空」
隣についてすぐ、陸嵩が呟く。
「青いね、空」
それを淡々とした感じで返す。
青すぎる空は今の自分に丁度いい、なんて思いながら息を吸い込んで吐く。
空を眺めながら少し間を置いて口を開く。
「ありがとう、目が覚めた」
そう言うと、彼は少し申し訳なさそうに此方を見る。
「叩いたこと謝らない、けど……、やっぱ女の子に手をあげるなんて最低だったよな」
手で顔を覆い、深く溜息をついた。
それに対して空から視線を逸らし、顔を覆っている彼を見つめて笑ってみる。
「あの強烈ビンタがなければ、だめだったよ。最高でした」
目を細めて笑ってみると、彼も掌の隙間から此方を見てたようで、顔を覆うのをやめた。
そしてふにゃり、と笑ってみせる。
お世辞なんかではない。
本当に心の底から、彼の行動一つ一つに感謝している。
彼の掌から伝わった熱が、頬から全身へと伝わり、“しっかりしろ、前を見ろ”と何度も何度も叫んでくれた。
逃げることで安心していた心の弱さを、あの熱が全て“間違い”だと教えてくれた。
助けられてばかりだ。
「……ありがとう」
もう一度心からの感謝を込めて言うと、彼は顔を赤くして頭を掻いた。



