学園マーメイド



そう言えば、教室に入ったときの生徒の目は痛かったな。
そりゃそうだろう、1年のルーキーで気さくな彼と1年で特待生といえども距離を置かれている自分だ。
どうしてこの二人が一緒なのか検討もつかなかっただろう。
普段の自分なら鞄ぐらい自分で持っていくと言い出しそうだが、この時は相当弱っていたらしい。
陸嵩に頼るしか術がないと思っていた。



寮に着き、ベッドに入ると悪寒と安心が同時に押し寄せた。


「寒い?」


陸嵩の問いに首を振る。
これ以上この人に頼っては駄目だ。
陸嵩はその答えに頷いて念入りに布団を掛けてくる。
彼はエスパーか、などと馬鹿な事を考えていると次第に瞼が落ちてくる。
睡眠不足もきっとあるんだ。なんせ3時間だ。
そうだ、当たり前の結果だ。こんなので泳いでも魚になれるわけがない。
一人で納得をしていると、意識が宙に舞い夢の中に落ちていった。


夢を見た。
兄と私、そしてもう一人が遊んでいる夢だ。
きっとこんな夢を見るのも、そんな話題が出たからに違いない。
ああそうだ、幼い頃こうやって遊んでいた。他愛もないことで笑い、泣き、喜び。
喜怒哀楽、丸出して生きていた。
夢の中の幼い自分が転び、それを心配したもう一人の子が駆け寄ってくる。
兄はいつの間にか消えていて、消えた兄に対して私ともう一人の子が大声をあげて泣いている。

――――蒼乃。
名前、名前だ。
――――大丈夫か、蒼乃。
平気よ、何も心配要らない。
――――蒼乃、蒼乃。
うるさい、名前を呼ばないで!