陸嵩は蒼乃と川上を乗せた飛行機を目で追いかけながら深呼吸した。
蒼乃が教えてくれたこと。
離れ離れでも、心にお互いが居れば頑張れる。
彼女は強い心の光を陸嵩に見せていた。
それと同時に、陸嵩を励ましてくれてもいた。
だから、頑張ろうと思えた。
今はその気持ちを信じて進めばいい。
もう一度深く深呼吸する。



「蒼乃は俺に会うために足を貰ったって言ってくれたんですよ」
「ん?」
「俺、王子様なんです、蒼乃の」



晴天のような笑みを見せる陸嵩に雪兎は首をかしげた。
そんな事も気にかけず、話を続ける。



「普通の人魚姫なら足を貰ったら声をなくすじゃないですか。でも蒼乃は人魚から人間になったのに声を失わなかった。泡にだってならないんです。だから、蒼乃は必ず大きくなって帰ってきます」



おとぎ話と蒼乃の繋がりが見えて雪兎は優しい笑みを漏らした。



「なんてったって学園のマーメイドですから!」



空を見つめる陸嵩の瞳。
強い輝きを見せるその瞳を雪兎は眩しそうに見つめて笑う。



「ああ、そうだな」