学園マーメイド




「……だから行くよ、アメリカに」



ごめんね、これだけは変えられない。
逃げることを向き合うことに変えることは出来ても、それだけは変えられない。
ずず、っと陸嵩から鼻のすする音が聞こえた。
再び顔を膝に埋めて、此方を見ようとしない。

……こんな顔、こんな気持ち、させたかったわけじゃない。

好きな人だ、そんな事させてくないに決まっている(だけどさせているのは私)。
好きなんだ、好きだ、とても好きだ。
陸嵩と出会って、友達を知って、苦しいこともあって、でも傍には陸嵩がいて。
彼なしでは乗り越えられない出来事がたくさんあった。



「後悔したくないんだ。やっぱり水泳は、あたしの一部だから」



言葉にできないほど、感謝してるけど。
どうやって表現したらいいのか分からない。
夕日はゆっくりと山を下っていく。



「……俺の支えがなくても平気?」



今までだんまりを決め込んでいた陸嵩がぽつりと呟いた。
少し拗ねるような顔を此方に向けて。
私はふ、と笑みを零す。



「まさか。陸嵩の支えがなければアメリカに行けないよ」



遠くで頑張っている貴方を思って、頑張れる。
必然的な結びつきでしょう?



「梅やラビ先輩も支えになってるだろ……?」
「ん、まあ、二人も心の支えではあるよ」



そう言うとほら、と言わんばかりにムッと眉を寄せられる。