学園マーメイド


同じように私の心臓が頼りなく揺れた。



「ごめん」



謝るのは私のほうなのに、口からは何も出てこない。
彼の声が耳に残るばかりで、何をしても口は開かない。



「……ちゃんと背中押さなきゃいけないのに……、ごめん。蒼乃を困らせてごめん」
「りく、たか」
「分かってるんだよ。蒼乃の為になる留学だって事も、俺が駄々をこねたってどうしようもない事も。……分かってるんだけど……、離れたくないよ」



心臓が、頭が、足が、手が、唇が、目が、鼻が。
全ての細胞が“彼が好きだ”と訴えた。
どうしてこんなにも心臓が震えるんだろう、どうしてこんなにも彼を愛おしく思ってしまうんだろう。
自分で出した決断に間違いは無いけど、この人を此処に残していくのは酷く、そうとても酷く悲しい。


でも、でもね。
陸嵩、私だって同じなんだよ。
寂しいし、出来れば離れたくない。
きっとアメリカに言ったら君を思い出して、一人寂しく思う夜が続くと思う。
それほどまでに私は陸嵩を必要としているんだよ。



「……今回の事は二人の未来の為にアメリカに行くとか、そんなロマンチックな話じゃない」
「…………」
「あたしはあたしの為に、アメリカに行く。……その後、どうなるかは分からない」



もしかしたら父の様にアメリカ在住になってしまうのか知れない。



「……あたしだって離れるのは寂しいと思うし、出来ればもっと陸嵩と学校生活を楽しみたいとも思う。でも、このチャンスはきっと人生で一度きりしかないと思う」



なんて男前な台詞だろう。
心の奥で笑う。