「……頑張ったね」



飛び込んですぐ、優しい腕が体を抱きしめた。
ゆっくりと慈しむ様に髪の毛を撫でられて、ますます涙腺を刺激される。困る。



「蒼乃は強い。……強いよ」
「……っ……」



優しい声もやめて欲しい。
どこまで私の涙腺を弱くする術をこの人は知っているんだろう。
暫く彼の抱擁に甘えていたのだが、ここが廊下だということに気づいて急いで体を離す。
その後すぐに陸嵩の顔を見ると瞳が真っ赤だと言う事に気づいた。
私の為に泣いてくれたということが嬉しくて、お礼と一緒に何故か笑い声をもらしてしまった。



「し、心配したんだよ!本当にもうっ」
「うん、ありがとう。ちゃんと言いたいこと言えたから、大丈夫」
「そっか」



優しい声色と顔。
強くなれるんだ、自信をもらえるんだ。
支えられて強くなれるなんていったらおかしいかな?
それでも君がいて初めて私は物事から逃げることをやることが出来たって言える。
大きい、大きい、心の中で膨れ上がる思いは貴方意外に向けられる人はいない。
好きだ。彼が、好きだ。
その気持ちを手のひらにこめて、突拍子もなく陸嵩の手を握る。
最初は戸惑ったように目を広げた陸嵩だったが、すぐに手を握り返してきた。



「じゃ、帰ろう」



うん、帰ろう。
言葉の変わりに笑顔で答えた、満面の笑みで(涙でぐちゃぐちゃだけど)。




壊した関係が元に戻る日がくるのかは分からない。
でも、信じていたい。彼女の強さと輝きを。
光、いつかまた笑いあいたい。だから、そこから這い上がってきて。
あの輝いてる顔で笑ってよ。