光、雪兎の話し信じてくれる?
やっぱり友達だって思うのを許してくれる?
光と過ごした日の全てが偽りだなんて思えないんだ。
あの笑顔は嘘だった?
お昼に誘ってと怒ったことも、合宿に行くためにわざわざ朝たずねてくれたのも、全部偽りの友達ごっこだった?

……ううん、全てが偽りではない。

本当の光が絶対いたはずだ。
彼女だって人間だ。過ちの一つや二つ、犯すに決まっている。
私だって同じような過ちを何度も何度もした。
だけどその度に、手を差し伸べてくれる人がいた。
彼女にはそんな人間がまわりにいなかっただけなんだ。
そう、間違いは誰にだってある。隠したい、忘れたい過去なんて山のようにある。
でももう、大丈夫。
光は変われる、前を向いて歩いていける(そう信じている)。





「あーおーの」



廊下の角を曲がったところだった。
今の気分とは似つかない陽気な声が聞こえて顔をあげる(誰なのかはわかる)。



「うん」



上げた顔が涙で濡れてべちゃべちゃなのは分かっていた。
だけど陸嵩の顔が見たくて、彼の屈託のない笑顔が見たくて、顔を上げてしまった。
そんな私の顔を見て陸嵩はふっと優しく笑うと両手を広げた。



「さあ、来い。蒼乃を受け止められるぐらい、此処は広いよ」
「……っうん」



いつもだったら笑い飛ばして皮肉の一つでも言うのに。
それに鼻水だって出ているはずだ。
陸嵩の胸板に飛び込んだら洋服にそれをつけてしまうのに、私の理性は飛んでいたらしい。
頼りない足取りで彼の広げられたそこに近づいて、顔を埋めた。
陸嵩の匂いがする。