陸嵩は動揺を隠し切れずに梅沢の肩に手を置くと揺さぶってきつい声をあげる。
「泳げないって、なんで?」
「わ、わかんない」
「……大会、そうだ!大会近いのに泳げないって……、どうして!」
あんなに愛していた場所だったのに、苦しんでもあの場所からは逃げ出さないって言っていた蒼乃なのに。
陸嵩の心臓がどくりと酷く大きな音を立てた。
何か原因があるには違いないと思ってた、だがそれがなんなのかは分からない。
だけど、……彼女が苦しんでいるのは確かだ。
よほどのことがあったに違いないのだ。……蒼乃があの場所から逃げ出したくなる何かが。
自分が傍にいなかった期間の間に、彼女が苦しんでいる事実に頭のてっぺんからつま先まで血の気が引いていくのを感じた。
陸嵩はぎゅっと拳を握る。
辛い時に傍にいてやれない。
一体何が彼女を?……会いたい、会いたいんだ。
溢れ出す彼女への気持ちがピークに達したような気がした。
沈黙が続く部屋の中、震える声が響く。
「黙ってて……、ごめん」
梅沢の一粒の涙が床に落ちた。
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